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自作詩、翻訳詩が中心のサイトです。
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海辺を歩く二つの影 親しげだけどよそよそしげ
二度と並べることのない 影を引きずって歩き
途中で見かけた子供たち 片手にスコップ 片手は目に
涙を拭いて立ち尽くしてる 影の持ち主が話しかける

ふたりで作った砂の城 いじめっ子たちに壊される
それはまるで二つの影のよう 育んだ愛が壊れかけてる
大きい影がこう言った 「俺たちも手伝うからまた作ろう」
小さい影がうなづいた 「もっと立派に作らなきゃね」

陽は少しずつ傾いて やがて夕暮れになりかけて
4人で作った砂の城 大きく立派な強い城
小さな二人が作る笑顔 大きな二人も釣られて笑う
遠くで見ていたいじめっ子は 壊しも出来ずに立ち尽くす

小さな二人は駆け足で 呼び止めた親の元に駆け
立ち尽くす大きな二つの影 二人の前には砂の城

壊れたらまた作ればいい さらに大きくて強いものを
大きい影がそう言った 小さな影に向かいながら
小さな影の足下に じわりと広がる涙の濡れ
大きい影は肩を回し 小さな影を抱き寄せた

立ち尽くした後いつの間にか 姿を消した二つの影
暗くなる海辺に残された 砂の城を月が見守る
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いつも跨っていた この白い単車
大雨が降ったあの日から 走れなくなっちまった
いつも突っ込んでた カギが合わない
スペアキーを入れても カギが合わない

一体どうしたんだと問いかけてみる
白い単車は黙ったまま 駆け巡った過去を問いかける
手荒く走ったけど粗末にはしていない白い単車
俺の意思に沿って駆けてくれたこの単車
だけど今は駆けるどころか
カギさえ拒絶されていた

走るのを諦め 徹底的に整備した
整備すれば駆けてくれると そう信じ続けていた
そんなある日 鍵穴が合った
イグニッションONで 光るNランプ

感動と労わりで胸が詰まった俺を突き放したこと
キックレバーを踏み倒しても 白い単車はうんとも言わない
真冬の夜に汗だくになり踏み倒しても エンジンは黙ったまんま
整備しても何もおかしくなかった だけど火は入らなかった
まるで俺を拒絶するかのように
走るのを拒絶した白い単車

いつも跨っていた 俺の白い単車
留守から戻ったときに ガレージから消えていたんだ
ガレージに残されたのは 壊されたキーシリンダー
もうひとつ残されたのは 壊されたディスクロック

一体どうなってるんだと混乱する俺
主のいないガレージを ただ一人たちつくしている
ガレージにはまだ新しいオイルの跡とタイヤの跡が
エンジンは黙ったままなのに 誰がエンジンをかけたのか
俺の分身のような白い単車
俺を拒絶して誰を受け入れたのか

いつもある場所に もう俺の単車はない
捨てられた気持ちで 胸が張り裂けそうだ
いつもある場所に あるべきものがない
主をなくしたメインキーは 悲しげな音を響かせてた

時が過ぎて俺は新しい単車を手に入れた
いなくなった白い単車と ぜんぜん違う色も形
まだ人見知りする黒い単車を徹底的に乗り倒した
やがて黒い単車は俺に馴染んで
数多の思い出を刻みこむんだ

黒い単車は馴染んでくれて 白い単車の記憶は薄れ
いつものように黒い単車に 跨り街を駆け抜けた
俺が跨る黒い単車は ますますいい感じになっていた
こんな頃にある場所で あの単車を見つけてしまった

懐かしさと変わり果てた姿に複雑な気持ち
めぼしいものは剥ぎ取られ錆びだらけのただの廃車だ
フレームにある傷がなければ白い単車と気付かなかった
変わり果てた俺の白い単車
もう甦ることはなくなってしまった

ポケットには残されたカギ この残骸を動かすためのカギ
キーシリンダーさえ 今はなくなってる
苦い想いをこらえつつ 俺はキーをシートに置いた
かって俺の単車だった 今はもうただの残骸に

悲しいといえば嘘になるけど 枷が取れた気持ちになる
再び黒い単車に跨り 遥か遠くに駆けていく
心なしか機嫌のいい 黒い単車の駆ける音
やっとひとつになれた気がする
遥か遠くに駆け抜けてくのさ これからずっと

SWAN SONG

ねえ、誰か教えてくれよ
今の僕は笑っているのか
それとも泣いているのか

ねえ、誰か教えてくれよ
なぜ僕は血まみれなのか
なぜ僕の手にナイフがあるのか

怖がらなくていいんだ
僕は君に何もしないから
ただここで見てるだけでいい
最期の僕の姿を

ねえ、君には僕がどう見えるんだ
何も傷つけないから
本当のこと話してよ

僕の意識がなくなる前に
君の顔が見えなくなる前に
深夜2時の河川敷 空に見えるは赤い月
これから僕は旅に出るんだ この月が消えるまでの旅
チケットも所持金もいらない かりそめの旅
ポケットの中には トルエンとポリ袋
さあ 旅に出かけよう 赤い月が消えるまで
くそったれな現実から このときだけは離れられた

学校も家も全部糞食らえ トルエンが誘う世界へ
夜が明けたら家に戻るから このときだけは旅をさせてくれ

赤い月が落ちたとき 糞食らえな日常に戻るのさ

あの頃から十五年経った 何も変わりはしなかった
俺は転がり続けた挙句 この場所へと辿りつく
この橋の下が今夜の塒 最期の日の塒
左ポケットにはエビアンが一本
右ポケットには白い粉とポンプ

今夜も赤い月が見える これから旅に出よう
切符は片道だけなのさ 行き先は天国なのさ
エビアンの蓋で白い粉を溶かし ポンプへ流し込む
俺は静脈にポンプを刺し 一気に流し込み
天国行きの電車のドアに乗る 出発のベルが鳴る

地上に残る俺の骸は カラスがついばんでくれるだろう
目隠しされて抱きかかえられて 僕はギロチン台に連れていかれた
街の中心にあるその場所は 野次馬たちでごった返した
数少ない庶民の娯楽が この場所での処刑ショー
今日のショーの主人公は まぎれもない囚人服の僕
ようこそこの僕の最期のショーへ 楽しんでくれ野次馬よ

武器を使うとお上に潰されるから 僕は武器をコトバに変えたんだ
コトバの武器でお上と戦う 手をこまねいたお上が考えた
ギロチン台で頭を切り落とせば 頭がつかえないから大丈夫
誰か一人を見せしめに殺せば 民は怖がりコトバを閉ざすと

出る杭は打たれるという いにしえのコトバの通り
一番目だって戦った俺は 無実の罪をなすりつけられたんだ
出来レースのような裁判 俺がかけられるのはギロチン
処刑されるその日までは 最期のコトバを考えていた

俺の首がギロチン台に置かれた 牧師が言う「最期のコトバは?」
俺は思い切り叫んだのさ テメエの頭で考えて動けと
そして最期に一言叫んだ 「この国をぶっつぶしてくれ」と

群集が静かになったとき 刃が俺の首を切り離した
俺の顔は笑えているのか 今もそれだけが気がかりなんだ
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